急な予定変更で飛行機の予約をキャンセルせざるを得なくなり、そのキャンセル料が高すぎると感じた経験はありませんか?JALやANAといった大手航空会社から、価格が魅力のLCCまで、航空券の種類は多様です。特に国際線の航空券ともなると、その金額はさらに大きくなります。
フレックス運賃ならキャンセルしやすいと聞くけれど、自分のチケットはどうなのか。払い戻し不可のチケットだと、支払った全額がもったいないことになってしまうのでしょうか。そもそもキャンセルはいつまで無料なのか、万が一に備えてキャンセル保険に入っておくべきか、このように疑問は尽きないものです。
この記事では、そんな飛行機のキャンセル料に関するあらゆる悩みを、専門的な視点から分かりやすく解き明かしていきます。
飛行機のキャンセル料が高すぎる理由と仕組み

※画像はイメージです
飛行機のキャンセル料が高すぎると感じる背景には、航空券の価格設定と密接に関わる手数料の仕組みがあります。ここでは、キャンセル料の内訳から、JAL・ANA・LCC・国際線といったケースごとの具体的な規定まで、その理由と構造を詳しく解説します。
- 飛行機のキャンセル料とは
- キャンセル料はいつまで無料になるのか
- キャンセル料の規定、JALの場合
- キャンセル料の規定、ANAの場合
- 注意が必要なLCCの場合のキャンセル料
- 国際線のキャンセル料は国内線と違う?
飛行機のキャンセル料とは
飛行機のキャンセル時に請求される料金は、実は「払戻手数料」と「取消手数料」という2種類の手数料から成り立っています。この2つの違いを理解することが、キャンセル料の仕組みを知る第一歩です。
まず「払戻手数料」とは、購入した航空券の代金を返金してもらう際に必要となる事務手数料を指します。航空会社が返金処理を行うための手間賃と考えると分かりやすいかもしれません。例えば、ANAやJALの国内線では、航空券1枚(1区間)あたり440円(税込)が一般的です。往復で予約していれば、2区間分で880円(税込)がかかる計算になります。
一方「取消手数料」は、予約していた便の座席をキャンセルすることに対するペナルティ料金です。航空会社は、一度予約された座席を他の乗客に販売する機会を失うリスクを負うため、特に割引率の高い航空券ほど、この取消手数料が高額に設定される傾向があります。運賃の〇%というように、航空券代金に対する割合で定められているのが特徴です。
したがって、キャンセル時に実際に支払う金額は、この2つの手数料を合計したものになります。格安航空券のキャンセル料が高額になりがちなのは、主にこの「取消手数料」が大きな割合を占めているためと考えられます。
キャンセル料はいつまで無料になるのか
「キャンセルはいつまで無料なのか」という疑問は多くの方が抱きますが、その答えは購入した航空券の運賃タイプによって大きく異なります。
まず、大前提として航空券の「予約のみ」を行い、まだ代金を支払っていない段階であれば、予約を取り消してもキャンセル料は一切発生しません。料金が発生するのは、支払い手続きを完了し、航空券の購入が確定した後からです。
購入後、キャンセル料が無料になる可能性があるのは、JALの「フレックス」やANAの「ANA FLEX」といった、いわゆる「普通運賃」に分類される航空券です。これらの運賃は価格設定が高めである代わりに、柔軟性が高く、搭乗便の出発前であれば取消手数料がかからず、払戻手数料のみでキャンセルできます。
しかし、多くの方が利用する「早割」などの割引運賃(JALのセイバー、ANAのVALUEなど)は、購入した時点から所定の取消手数料が発生します。さらに、搭乗日までの日数に応じて手数料率が変動し、出発日が近づくにつれて段階的に高くなっていくのが一般的です。
中には、航空会社や予約サイトの規定により「購入から24時間以内」であれば、理由を問わず無料でキャンセルできる制度を設けている場合もあります。もし予約内容に誤りを見つけた場合などは、この制度が使えないかすぐに確認することをおすすめします。
キャンセル料の規定、JALの場合
JAL(日本航空)の国内線キャンセル料は、運賃の種類によって大きく異なります。ここでは主要な運賃タイプにおける、出発前と出発後のキャンセル規定をまとめます。
料金は「払戻手数料(1区間につき440円)」に加えて、以下の「取消手数料」がかかります。
運賃タイプ |
出発前の取消手数料 |
出発後の取消手数料 |
フレックス |
無料 |
税抜運賃額の約20%相当額 |
セイバー |
税抜運賃額の約5%相当額 |
税抜運賃額の100% |
スペシャルセイバー |
出発55日前まで:約5% |
税抜運賃額の100% |
株主割引 |
無料 |
税抜運賃額の約20%相当額 |
※2025年7月時点の情報。最新情報は公式サイトでご確認ください。
フレックス運賃の柔軟性
表からも分かる通り、「フレックス」や「株主割引」は柔軟性が非常に高いのが特徴です。出発時刻前であれば、取消手数料は発生せず、440円の払戻手数料のみで手続きが可能です。急な予定変更の可能性があるビジネス利用などで重宝されます。
割引運賃の注意点
一方で「セイバー」や、より割引率の高い「スペシャルセイバー」は注意が必要です。「セイバー」は出発前であれば運賃の約5%と比較的手頃ですが、「スペシャルセイバー」は出発日の55日前を境に手数料が約50%へと大幅に跳ね上がります。
そして、どの割引運賃であっても、搭乗便の出発時刻を過ぎてしまうと、運賃の100%が取消手数料となり、一切の払い戻しが受けられなくなります。キャンセルを決めた場合は、必ず出発時刻までに手続きを完了させることが大切です。
キャンセル料の規定、ANAの場合
ANA(全日本空輸)の国内線キャンセル料も、JALと同様に運賃タイプによって細かく規定されています。
こちらも「払戻手数料(1区間につき440円)」と、以下の「取消手数料」の合計額が請求されます。
運賃タイプ |
出発前の取消手数料 |
出発後の取消手数料 |
ANA FLEX |
無料 |
税抜運賃額の約20%相当額 |
ANA VALUE |
税抜運賃額の約5%相当額 |
税抜運賃額の100% |
ANA SUPER VALUE |
搭乗日やタイミングにより30%~60% |
税抜運賃額の100% |
株主優待割引 |
無料 |
税抜運賃額の約20%相当額 |
※2025年7月時点の情報。最新情報は公式サイトでご確認ください。
SUPER VALUE運賃の段階的な手数料
ANAのキャンセル料で特に特徴的なのは、「ANA SUPER VALUE」シリーズの取消手数料が、出発日までの日数に応じて細かく変動する点です。
公式サイトによると、搭乗日の55日前までは約30%、45日前までは約40%、28日前までは約50%、そして14日前から出発時刻前までは約60%と、段階的に手数料が上がっていく仕組みです。
このため、SUPER VALUE運賃を予約した場合は、キャンセルを決断するタイミングが非常に重要になります。一日違うだけで、数千円から数万円単位で支払う金額が変わる可能性もあるのです。
特別な事情がある場合
前述の通り、JALと同様にANAでも、搭乗者本人の病気や身内の不幸といったやむを得ない事情がある場合は、医師の診断書などを提出することで、手数料が免除され全額払い戻される特別対応がなされることがあります。万が一の際は、諦めずにコールセンターへ相談してみることをお勧めします。
注意が必要なLCCの場合のキャンセル料
LCC(格安航空会社)を利用する際は、キャンセルに関するルールが大手航空会社と大きく異なるため、特に注意が必要です。安さを追求する代わりに、柔軟性が制限されているのが一般的です。
多くのLCCでは、最も安い運賃プランの場合、乗客の自己都合によるキャンセル・払い戻しは一切認められていません。つまり、支払った航空券代金は全額戻ってこないということです。
ただし、LCC各社は複数の運賃プランを用意しており、追加料金を支払って上位のプランを選択することで、一定の条件下で変更やキャンセルが可能になる場合があります。
航空会社 |
運賃タイプ |
キャンセル・払い戻し規定(自己都合) |
Peach |
シンプルピーチ |
不可(返金なし) |
バリューピーチ |
取消手数料を支払い、ピーチポイントで払い戻し |
|
ジェットスター |
Starter |
不可(返金なし)※オプション追加で可 |
Starter Plus |
不可(返金なし)※オプション追加で可 |
|
スプリング・ジャパン |
ラッキースプリング |
手数料を支払い払い戻し可(ただし高額) |
※2025年7月時点の情報。最新情報は公式サイトでご確認ください。
払い戻しの方法
LCCで払い戻しが可能なプランであっても、現金ではなく、その航空会社でしか利用できない「ポイント」や「バウチャー」で返還されるケースがほとんどです。有効期限が設定されていることも多いため、実質的に次の搭乗を促す仕組みになっています。
予約時には、価格の安さだけに目を奪われるのではなく、万が一キャンセルする可能性を考慮し、運賃プランごとの規定をしっかりと確認することが、後悔しないための鍵となります。
国際線のキャンセル料は国内線と違う?
国際線の航空券におけるキャンセル料は、国内線と比較してさらに複雑で、高額になる傾向があります。その理由は、運賃規則が航空会社、予約クラス、購入した国、経由地の有無など、多くの要因によって細かく定められているためです。
まず、国際線の割引運賃(PEX運賃)は、予約変更が一切不可、またはキャンセル時に高額な手数料が発生するものが大半を占めます。一度購入すると、ほぼ返金されないと考えた方がよいケースも少なくありません。
一方で、普通運賃やビジネスクラスなどの高額な航空券は、比較的柔軟な変更・キャンセル規定が適用されることが多いですが、それでも手数料が全くかからないケースは稀です。
税金・燃油サーチャージの払い戻し
国際線航空券の代金には、運賃の他に、各国が課す空港税や、航空燃料価格に連動する燃油サーチャージなどが含まれています。
たとえ航空券自体が「払い戻し不可」の運賃であっても、キャンセルして搭乗しなかった場合、これらの税金や燃油サーチャージは返金の対象となることがあります。ただし、航空会社や旅行代理店によっては、その返金手続きに対して別途手数料を請求される場合があるため、返金額が手数料を下回る可能性も考慮に入れる必要があります。
国際線の航空券をキャンセルする場合は、購入した航空会社の公式サイトや、旅行代理店の規約を丁寧に確認し、不明な点は直接問い合わせることが不可欠です。
高すぎる飛行機のキャンセル料を回避するコツ

※画像はイメージです
高すぎると感じる飛行機のキャンセル料ですが、予約時の選択や、もしもの時のための知識を持つことで、その負担を大きく軽減できる可能性があります。ここでは、払い戻し不可のリスクから、保険の活用法まで、キャンセル料を賢く回避するための具体的なコツを紹介します。
- 払い戻し不可の航空券のリスクを知る
- フレックスならキャンセル料が安い?
- もったいないを防ぐチケットの選び方
- もしもの備えにキャンセル保険を検討
払い戻し不可の航空券のリスクを知る
「払い戻し不可」と記載された航空券は、特にLCCの最安運賃や、大手航空会社のセール運賃などでよく見られます。価格が非常に魅力的な反面、購入する際にはそのリスクを正しく理解しておくことが大切です。
文字通り、払い戻し不可の航空券は、購入後に自己都合でキャンセルした場合、支払った運賃は一切返金されません。これは、病気や急な仕事など、いかなる理由であっても原則として適用されます。
しかし、前述の通り、運賃が返ってこない場合でも、支払った代金の中に含まれる「空港施設使用料(空港税)」などの税金部分は、返金の対象となる場合があります。航空会社は、実際に搭乗しなかった乗客の分の税金を国や空港に納付する必要がないためです。
ただし、この税金の払い戻しを受けるためには、乗客自身が申請手続きを行う必要があります。その際、航空会社によっては返金手数料がかかることもあり、返金額よりも手数料の方が高くなってしまうケースも考えられます。
払い戻し不可の航空券は、予定が完全に確定しており、キャンセルする可能性が限りなく低い場合にのみ選択するのが賢明です。
フレックスならキャンセル料が安い?
「フレックス」や「FLEX」といった名称で提供される運賃は、一般的に「普通運賃」またはそれに準ずる柔軟性の高い航空券を指します。これらの航空券を選ぶ最大のメリットは、キャンセルや変更に関する規定が非常に緩やかである点にあります。
JALの「フレックス」やANAの「ANA FLEX」の場合、搭乗便の出発時刻前であれば、取消手数料は無料です。つまり、440円の払戻手数料だけでキャンセルが可能です。また、出発時刻後であっても、運賃の約20%相当額という比較的低い手数料で払い戻しが受けられます。
この柔軟性は、予定が流動的なビジネスでの出張や、天候に左右されやすい離島への旅行、または同行者の体調に不安がある場合など、不確定要素の多い旅において絶大な安心感をもたらします。
もちろん、その分、価格は早割などの割引運賃に比べてかなり高額に設定されています。したがって、全ての旅行でフレックス運賃を選ぶのが最適とは言えません。
自身の旅行計画を鑑み、キャンセルする可能性が少しでもあるならば、割高であってもフレックス運賃を選ぶ価値は十分にあります。逆に、数ヶ月前から予定が確定している旅行であれば、割引運賃で費用を抑える方が合理的と言えるでしょう。
もったいないを防ぐチケットの選び方
高額なキャンセル料を支払う「もったいない」事態を避けるためには、航空券を購入する段階での慎重な選択が鍵となります。
まず、航空券をどこで購入するかも重要なポイントです。航空会社の公式サイトから直接購入するのが最もシンプルですが、旅行代理店や比較サイトを経由して購入する場合、注意が必要です。これらの代理店は、航空会社が定めるキャンセル料に加えて、独自の取扱手数料やキャンセル手数料を上乗せしている場合があります。予約前には、その代理店独自のキャンセル規定を必ず確認しましょう。
次に、予約直後の無料キャンセル制度を知っておくと役立ちます。一部の航空会社では、航空券の購入から24時間以内であれば、ペナルティなしでキャンセルできるルールを設けています。もし予約内容を間違えたり、急に都合が悪くなったりした場合は、この制度が適用できないか、速やかに確認することをおすすめします。
最終的には、ご自身の旅行の性質を見極めることが最も大切です。友人との気軽な旅行で、日程変更の可能性が低いのであればLCCの最安運賃も良い選択肢です。一方で、絶対に失敗できない重要な旅行や、予定変更の可能性がある場合は、多少高くても大手航空会社の割引運賃やフレックス運賃を選ぶことが、結果的に「もったいない」出費を防ぐことに繋がります。
もしもの備えにキャンセル保険を検討
どれだけ慎重に計画を立てていても、予期せぬトラブルで旅行をキャンセルせざるを得ない状況は起こり得ます。そうした「もしも」の事態に備える有効な手段が、「キャンセル保険」です。
キャンセル保険とは、旅行をキャンセルした際に発生する取消手数料や払戻手数料などの費用を補償してくれる保険です。航空会社が独自に提供しているもの、損害保険会社が販売している旅行保険の特約、また一部のクレジットカードに付帯しているものなど、いくつかの種類があります。
補償される主な理由
保険によって対象となる範囲は異なりますが、一般的には以下のような理由でのキャンセルが補償の対象となります。
-
本人や同行者、親族の病気やケガによる入院・通院
-
親族の不幸
-
急な出張命令
-
搭乗予定の公共交通機関の大幅な遅延や運休
-
自宅の火災などの損害
保険選びのポイント
LCCのPeachが提供する「Peachチケットガード」のように、特定の航空会社の予約時にのみ加入できる保険もあれば、より広範な旅行に対応できる損害保険会社の商品もあります。
キャンセル保険を選ぶ際は、保険料だけでなく、どのような理由が補償対象となるのか、補償金額の上限はいくらか、といった詳細をしっかりと比較検討することが大切です。特に、払い戻し不可の航空券や、高額なパッケージツアーを予約する際には、キャンセル保険への加入を積極的に検討することで、安心して旅行の準備を進めることができるでしょう。
飛行機キャンセル料が高すぎると後悔しないために
この記事では、高すぎると感じがちな飛行機のキャンセル料について、その仕組みから対策までを詳しく解説してきました。最後に、後悔しないために押さえておくべき重要なポイントをまとめます。
- キャンセル料は「払戻手数料」と「取消手数料」の2種類で構成される
- 払戻手数料は事務手数料、取消手数料は予約取消のペナルティ
- 航空券の購入(支払い)が完了した時点からキャンセル料は発生する
- JALやANAの普通運賃(フレックス)は出発前の取消手数料が無料
- JALやANAの割引運賃は出発日が近づくほど取消手数料が高くなる
- LCCの最安運賃は原則として自己都合でのキャンセル・払い戻しは不可
- LCCでも上位プランやオプション追加でキャンセル可能になる場合がある
- 国際線のキャンセル料は国内線より複雑で高額になる傾向がある
- 払い戻し不可のチケットでも空港税などは返金される可能性がある
- ただし税金の返金には申請や手数料が必要な場合がある
- 旅行代理店経由の予約は独自のキャンセル手数料に注意が必要
- 病気や身内の不幸など特別な事情では手数料が免除されることがある
- その際は医師の診断書などの証明書類が必要
- 万が一に備え、キャンセル費用を補償する「キャンセル保険」も有効
- 自分の旅行スタイルや予定の確実性に合わせて航空券を選ぶことが最も重要