「ウニはなぜ高いのだろう」と、価格を見て驚いた経験はありませんか。高級食材の代名詞ですが、この高騰はいつまで続くのか気になります。
ウニはなぜ美味しいのか、多くの人を魅了する秘密がある一方で、ウニの美味しさがわからない、あるいは嫌いだと感じる方もいらっしゃいます。近年注目される養殖の状況も含め、ウニの価格に関する様々な疑問に答えていきます。
ウニはなぜ高い?5つの理由
- 高い理由①:手作業で獲る希少性
- 高い理由②:鮮度管理の難しさ
- 高い理由③:需要と供給の不均衡
- 高い理由④:漁獲制限と資源保護
- 高い理由⑤:養殖に時間がかかる
- ウニの高騰はいつまで続く?
- ウニの養殖技術は進んでいる?
高い理由①:手作業で獲る希少性
ウニの価格が高い最も大きな理由は、その漁獲方法にあります。
ウニは主に岩場に生息し、海藻を食べて成長します。このような場所にいるため、網を使った大規模な漁ができません。岩が障害となり、網で一度に引き上げることが困難なのです。
そのため、ウニ漁は漁師が船の上から箱メガネで水中を覗き「タモ」と呼ばれる長い柄の網や、先端が分かれた「ヤス」という道具を使って、海底にいるウニを一つひとつ手作業で採る方法が主流です。
また、海女さんやダイバーが海に潜って直接採取する方法もあります。どちらにしても、非常に手間と時間がかかる作業です。
さらに、水揚げ後の加工も大変です。殻を割って中身を取り出し、繊細で崩れやすい身を丁寧に洗浄する作業は、すべて手作業で行われます。
機械化が難しく、熟練の技術が求められるため、一度に大量生産ができません。このように、漁獲から加工までの全工程で人件費と時間がかかることが、価格に反映されています。
高い理由②:鮮度管理の難しさ
ウニは、他の海産物と比較しても非常に鮮度が落ちやすい食材です。
殻から取り出したウニの身(生殖巣)は、空気に触れると溶けやすく、型崩れしやすい性質を持っています。そのため、漁獲後の加工は時間との勝負であり、素早い処理が求められます。
この繊細な品質を保ったまま消費者の元へ届けるためには、厳格な温度管理と迅速な輸送体制が不可欠です。例えば、型崩れを防ぐためにミョウバン水につける加工(板ウニ)や、海水に近い塩水に浸す加工(塩水ウニ)など、特別な処理が必要となります。
これらの鮮度保持にかかる手間や、冷蔵・冷凍輸送にかかる物流コストが、ウニの販売価格を押し上げる一因となっています。特に高品質な生ウニほど、管理にコストがかかる傾向があります。
高い理由③:需要と供給の不均衡
ウニの価格は、単純な需要と供給のバランスによっても大きく左右されます。
前述の通り、ウニは一度に大量に獲ることができず、供給量が限られています。一方で、寿司や海鮮丼の人気ネタとして、国内だけでなく海外でもウニの需要は年々高まっています。
特に、品質の高い国産ウニは人気が集中しやすく、限られた供給量に対して食べたいと望む人が多いため、価格が上がりやすくなります。
また、天候不順も価格に影響を与えます。ウニ漁は波が穏やかな日でなければ行えないため、しけ(海が荒れること)が続くと漁に出られる日数が減少し、水揚げ量がさらに少なくなります。
2024年のようにしけが続いた年は、出漁が例年の半分ほどになることもあり、供給不足が価格の急激な高騰を招きました(参照:『ウニがいない』漁が始まるも頭を抱える漁師 「120~130人前が 今年は60人前くらい」例年の半分以下 全国から客がくる行列のできる店も不安に 異変のワケはコンブ? 北海道積丹町|FNNプライムオンライン)
高い理由④:漁獲制限と資源保護
ウニの資源を守るため、多くの産地で漁獲制限が設けられていることも、供給量が限られる理由の一つです。
ウニは需要が高く高値で取引されるため、過去には乱獲が問題となった時期もありました。そこで、資源の枯渇を防ぎ、持続可能な漁業を行うために、各地域で禁漁期間や漁獲サイズ、漁獲量の上限などが厳しく定められています。
例えば、漁ができる時間を午前中のみに制限したり、一定の大きさ(ウニスケールという器具で測定)に満たない小さなウニは海に戻したりするルールが徹底されています。
近年では、海水温の上昇による「磯焼け」(ウニが海藻を食べ尽くし、海底が砂漠化する現象)も問題になっています。磯焼けした場所のウニは、エサ不足で中身がスカスカになってしまうため、商品価値がありません。
このような環境問題への対策や資源管理のための取り組みが、結果的に市場に出回るウニの量を制限し、価格の安定(高止まり)に影響を与えています。
高い理由⑤:養殖に時間がかかる
「養殖で増やせば安くなるのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、ウニの養殖は技術的に難しく、出荷までに非常に長い時間がかかります。
ウニが食用サイズになるまでには、最低でも2年、場合によってはそれ以上の期間が必要です。魚類など他の養殖対象と比べても、成長に時間がかかるため、コスト効率が良いとは言えません。
また、ウニは非常にデリケートな生き物であり、水質やエサの管理が難しく、本格的な養殖技術はまだ確立途上の段階です。
そのため、現在のところ養殖ウニが市場に大量に出回ることはなく、供給不足を解消するには至っていません。天然物に頼らざるを得ない状況が続いていることも、ウニが高価である理由の一つです。
ウニの高騰はいつまで続く?
ウニの価格高騰が「いつまで」続くのか、残念ながら現時点(2025年10月)で明確な見通しは立っていません。
価格高騰の最大の原因は、地球温暖化に伴う海水温の上昇です。海水温が高い状態が続くと、ウニのエサである海藻が育ちにくくなる「磯焼け」が発生したり、ウニ自体の生育が悪くなったりします。これにより、全国的に漁獲量が減少している傾向にあります。
2024年は特に天候不順(しけ)の影響で出漁日数が激減し、価格が異常なまでに高騰しました
2025年に入り、天候が安定したことで漁獲量が前年よりは改善し、一部地域では価格が落ち着きを見せた時期もありました。
しかし、根本的な原因である海水温の上昇や磯焼けの問題が解決していない限り、漁獲量が平年並みに回復するのは難しいと考えられています。そのため、2024年のような極端な高値は避けられたとしても、ウニの価格は引き続き高止まりする可能性が高い状況です。
ウニの養殖技術は進んでいる?
ウニの価格安定の切り札として、養殖技術の研究開発が進められています。
前述の通り、ウニは成長に時間がかかるため養殖が難しいとされてきました。しかし、近年では新しい試みが各地で行われています。
その中で特に注目されているのが、廃棄される野菜(キャベツなど)をエサとして利用する養殖方法です。
これは、神奈川県や山口県などで研究が進められています。この方法は、エサが不足する「磯焼け」の海で獲れた、中身がスカスカのウニ(駆除対象)に商品価値のない野菜を与えることで、短期間で身入りを良くするものです。
この「キャベツウニ」などは、味も甘みがあり美味しいと評価され、一部では試験的な商品化や飲食店への提供も始まっています。
ただし、これらの養殖技術はまだ研究開発や実証実験の段階のものが多く、市場に安価なウニを大量供給できるまでには至っていません。本格的な技術が確立され、養殖ウニが安定して流通するようになるには、まだ時間がかかると予想されます。
ウニはなぜ高い?味と選び方
- ウニはなぜ美味しいのか?
- ウニの美味しさがわからない・嫌いな理由
- 生うに、塩水うに。どっちが美味しい?
- ウニの旬はいつ?
- ウニがなぜ高いかを知って選ぼう
ウニはなぜ美味しいのか?
ウニのあの独特な美味しさは、豊富な旨味成分と甘味成分によるものです。
私たちが「美味しい」と感じるウニの味は、主にアミノ酸によって構成されています。文部科学省の「食品成分データベース」などの情報によると、ウニには旨味成分であるグルタミン酸やアスパラギン酸が豊富に含まれているとされています。
さらに、ウニの濃厚な甘みは、グリシンやアラニンといった甘味を持つアミノ酸によるものだといわれています。
ウニは主に昆布や海藻を食べて育ちます。上質な昆布の産地である北海道の利尻や礼文などで獲れるウニが特に美味しいとされるのは、エサとなる昆布自体にこれらの旨味成分が豊富に含まれているからです。
良いエサを食べて育つことで、ウニの身(生殖巣)にも濃厚な旨味と甘みが蓄えられ、あの「海をまるごと閉じ込めたような」と表現される複雑で深い味わいが生まれます。
ウニの美味しさがわからない・嫌いな理由
多くの人が絶賛する一方で、「ウニの美味しさがわからない」「苦くて生臭いから嫌い」と感じる人がいるのも事実です。これには、いくつかの明確な理由が考えられます。
ミョウバンの苦味
ウニが嫌いな理由として最も多く挙げられるのが「苦味」です。この苦味の正体は、多くの場合「ミョウバン」です。
ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウムなど)は、食品添加物の一種です。ウニの身は非常に柔らかく、殻から出すと溶けて型崩れしやすいため、一般的に流通している木箱に並べられた「板ウニ(折ウニ)」では、形状を保ち日持ちを良くするためにミョウバン水が使用されます。
このミョウバンの使用量が多すぎたり、処理が適切でなかったりすると、ウニ本来の甘みよりも、ミョウバン特有の苦味や薬っぽい渋みが勝ってしまいます。過去にこのようなウニを食べて「ウニ=苦い」という印象を持ってしまった方が少なくありません。
鮮度やウニの状態
ウニは鮮度が命です。鮮度が落ちると、生臭さやえぐみが出やすくなります。また、加工時に内臓などがきちんと処理されていない場合も、雑味の原因となります。
さらに、ウニの状態も味に影響します。旬を過ぎ、産卵期が近づいて成熟しすぎた生殖巣には、苦味成分が含まれることがあるとされています。
「産地で食べたウニは美味しかった」という話が多いのは、獲れたてで鮮度が良く、ミョウバンを使用していない(あるいは使用が最小限の)ウニを食べた経験である可能性が高いです。
生うにと塩水うに。どっちが美味しい?
美味しいウニを選びたい場合、加工方法の違いを知っておくことが大切です。ウニの加工品は、主に「板ウニ(折ウニ)」と「塩水ウニ」に分けられます。
板ウニ(折ウニ)
木箱やプラスチックの折に、ウニの身が美しく並べられたものです。見た目が良く、お寿司屋さんや高級料理店でよく使われます。
前述の通り、この形状を保つためにミョウバンを使用しているものがほとんどです。ミョウバンの使用量が絶妙なバランスで加工された高級品は非常に美味しいですが、ものによってはミョウバンの苦味を感じやすい場合があります。
塩水ウニ
殻から取り出したウニの身を、海水とほぼ同じ濃度の塩水に浸したままパックや瓶詰めにしたいわゆる「生うに」です。
こちらはミョウバンを一切使用していないため、ウニ本来の風味、とろけるような食感、そして雑味のないクリアな甘みをダイレクトに味わうことができます。見た目は板ウニほど整っていませんが、味を最優先するならば塩水ウニがおすすめです。
ただし、塩水ウニは日持ちがせず、冷蔵保存でも賞味期限が2日程度と非常に短い点に注意が必要です。輸送技術の発達により、近年人気が高まっている加工方法です。
ウニの旬はいつ?
ウニは産地や種類によって旬が異なるため、ほぼ一年中、日本のどこかで旬のウニを味わうことができます。ウニは産卵期の1~2ヶ月前が、最も栄養を蓄えて美味しくなるとされています。
日本で主に流通しているウニの種類と、主な産地ごとの旬の目安を表にまとめます。
| ウニの種類 | 主な特徴 | 主な産地 | 旬の時期(目安) |
| エゾバフンウニ | 濃いオレンジ色。甘みが非常に強く濃厚な味わい。高級品。 | 北海道(利尻・礼文、羅臼など)、東北 | 6月~8月(利尻・礼文など) 1月~5月(襟裳など) 地域により大きく異なる |
| キタムラサキウニ | やや黄色がかった色(白ウニとも呼ばれる)。上品であっさりした甘み。寿司ネタに多用される。 | 北海道、東北(三陸など) | 6月中旬~8月(北海道日本海側) 5月~8月(三陸地方) |
| ムラサキウニ | キタムラサキウニより南に生息。黄色く濃厚でコクがある味わい。 | 本州(日本海側、太平洋側)、九州 | 6月~8月(太平洋側) 3月~4月(山口など) |
| バフンウニ | エゾバフンウニより小ぶり。身は小粒だが濃厚。 | 本州(日本海側)、九州 | 3月~4月(日本海側) 6月~7月(山口など) |
| アカウニ | 赤みがかった殻。漁獲量が少なく「幻のウニ」とも。濃厚で甘みが強い。 | 九州、東京湾以南 | 夏~秋(9月~10月頃) |
このように、旬は種類と産地によって様々です。例えば、同じ北海道でも地域によって旬がリレーしていきます。美味しいウニに出会うためには、その時期にどこの産地が旬を迎えているかを知ることが役立ちます。
ウニがなぜ高いかを知って選ぼう
この記事では、ウニがなぜ高いのか、その理由について詳しく解説してきました。ウニがなぜ高いのか、その背景には様々な要因が複雑に絡み合っています。
- ウニの価格は漁獲から加工まで手作業が多く、希少性が高いため
- 鮮度管理や輸送に大きな手間とコストがかかるため
- 世界的な需要の高まりに対し、供給量が追いついていないため
- 資源保護のための漁獲制限や、海水温上昇による漁獲量減少のため
- 養殖技術が難しく、出荷までに時間がかかり大量供給ができないため
- 価格高騰は海水温上昇が根本原因であり、高止まりが続くと予想される
- ウニの美味しさの正体は豊富なアミノ酸(旨味・甘味)
- ウニが嫌いな理由はミョウバンの苦味や鮮度の問題が考えられる
- 本当に美味しいウニを選びたいならミョウバン不使用の「塩水ウニ」がおすすめ
- ウニは種類や産地によって旬が異なり、ほぼ通年どこかで旬を迎える
- エゾバフンウニは濃厚な甘み、キタムラサキウニは上品な甘みが特徴
- 国内の主な産地は北海道や東北地方(三陸)
- 九州や山口ではアカウニやムラサキウニも獲れる
- 近年は廃棄野菜を使った「キャベツウニ」などの養殖技術が研究されている
- 養殖ウニが市場に安価で大量に出回るにはまだ時間がかかる見込み

